子どもは息苦しさを
言葉でうまく伝えられません
ぜん息の患者さんは、下の図のように、空気の通り道である気道に炎症が起こり、狭くなって呼吸が苦しくなる状態(発作)を繰り返しますが、子どもは大人と違い、言葉でうまく伝えることができません 。
そのため、ぜん息の子どもは泣いたりぐずったり、不機嫌になることで喘息発作を伝えようとします。小児喘息の発作では、喘鳴(ぜんめい)という「ゼーゼー、ヒューヒュー」と聞こえる苦しそうな症状が現れます。これは気道を息が通る音で、喘息の一般的な症状の一つですが、乳児や幼児の場合、この「ゼーゼー、ヒューヒュー」がはっきり聞こえないこともあります。喘鳴がしないからといって喘息でないということはありません。大切なのは、「ゼーゼー、ヒューヒュー」が聞き取れなくても、息苦しさを訴えているかどうかを読み取ってあげることです。
喘息発作は、昼間より夜間や明け方に多く起こります。昼間は比較的症状が軽い場合があるので、「昼間元気だったから大丈夫だ」ではありません。子どもの様子を注意深く観察し、症状を見逃さないように注意しましょう。
異常を感じたらすぐに医療機関へ
喘息は7割以上の方が自然治癒するとされ、早期に治療を開始し、しっかりと治療を継続すれば、日常生活も問題ありません。
初めての喘息発作は、軽度の場合、医師でもなかなか判断出来ないことがありますので、医療に精通していないご家族は、なおさら判断できないでしょうし、息苦しそうなわが子を見て、本当に心配なさると思います。お子さんに少しでも異常を感じたら、積極的に医療機関にかかってください。
喘息・小児ぜんそくを専門とするクリニックです
私は喘息(ぜんそく)を専門にする呼吸器内科の専門医です。
総合病院で小児科医として勤務した経験を活かし、お子さまからご年配の方までの喘息で悩む方の力になりたいと強く考えています。
そもそも、喘息は小児から成人まで切れ目のない治療が必要な慢性疾患です。「切れ目のない喘息治療」をめざし、小児科と呼吸器内科の枠組みをなくして、適切な治療を提供したいと決意しています。
また、私自身も喘息患者であり、子供の頃は喘息の苦しさを身に染みて感じていました。そして、私の娘も幼い頃から喘息に悩まされており、親として喘息の子どもを抱える両親のつらさ・大変さにも直面しました。
呼吸器専門医としてのスキルと小児科での経験を活かし、患者とその家族に寄り添いながら、子どもから大人まで専門医レベルでしっかりと診療することで最適な治療を提供したいと思います。
- ぜん息は、子どものうちに治しきる
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「喘息とは気道(気管支など空気の通り道)の慢性的な炎症です」。呼吸の通り道である気道に炎症が起こり狭くなり、呼吸が苦しくなる状態(喘息発作)を繰り返します。喘息の人の気道は、症状がないときでも常に炎症を起こし、気道が狭く、空気が通りにくくなっています。 また気道の表面の炎症がちょっとした刺激にも敏感に反応し、ダニや風邪、ペットの毛などの刺激にから発作が起きます。発作から気道の炎症がさらにひどくなり、気道もより狭くなってしまう悪循環に陥ります
炎症が長期間続くと気管支が硬くなって、気道が狭いまま戻らなくなり、成人になっても呼吸機能が低いままになってしまうことがあります。
喘息は、根気よく治療を継続すれば、コントロールのできる病気です。
特に小さなお子さんのぜん息治療治療は大変ですが、ご家族の協力の元、子どものうちから、喘息をコントロールしていくことが非常に重要です。 - 喘息かもしれない?症状
- 喘息の症状はさまざまです。
息苦しさや、呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という喘鳴(ぜんめい)などの他に、咳だけの喘息もよく知られています。「ゼーゼーしないから喘息じゃない」ということはありません。
以下の症状が続いている方は、一度受診してください。治療せずに放置すると、気道の炎症が悪化して、発作の頻度が多くなったり、症状が重くなることがあります。
①風邪をひくたびに、咳がずっと続く。- ②息苦しい、せき込む
③呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がでる
④走ったり運動をした後、せき込んだり息苦しい
⑤夜間・早朝に咳や息苦しいという症状が出やすい - ②息苦しい、せき込む
- 強いぜん息発作のサイン
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- 家庭で以下のような急性発作のサインが現れた時は、緊急性が高いです。直ちに発作時の吸入薬を使用していただき、受診の準備をしてください。発作時の吸入薬は20~30分ごとに3回まで吸入してもよいです。
場合によっては(顕著な呼吸困難や意識低下あるいは興奮)救急車を要請してください。特に2歳未満の子どもの場合、症状の進行が速い傾向がありますので、早期の対応が必要です。喘鳴(「ゼーゼー、ヒューヒュー」)がないからといって、発作でないことはありません。日頃の「顔色」「動作」「食欲」「睡眠」「会話」などと様子が異なるか、注意深く観察してください。
○強いぜん息発作のサイン
- 唇が白い、もしくは青~紫色
- 息を吸う時に小鼻が開く
- 息を吸う時に胸がペコペコへこむ
- 横になれない、眠れない、歩けない
- 話すのが苦しい、ぼーっとしている
- 興奮する、暴れる
- 家庭で以下のような急性発作のサインが現れた時は、緊急性が高いです。直ちに発作時の吸入薬を使用していただき、受診の準備をしてください。発作時の吸入薬は20~30分ごとに3回まで吸入してもよいです。
- まずはお子さんのアレルゲンを知りましょう
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お子さんがどんなときに発作が起きるか、普段から症状をよく観察し、それらを避けることが非常に大切です。
人によって、刺激物質となるアレルゲンはさまざまです。発作が起きた時の状況を思い出し、それらに合わせた対策を実践しましょう。一般的なアレルゲンには「ハウスダスト、ダニ、イヌ・ネコの毛等」が多いです。血液検査でもある程度調べることができます。
発作が起きたら、「発作の前触れはなかったか」「発作の原因(アレルゲン)で考えられるものは」「発作の経緯・吸入薬の使用頻度」の3点を記録していただくと、今後の診断にも役立ちます。
○注意して記録すること
1.発作の前触れはなかったか?
・夜中や明け方に咳込んだか?
・風邪をひいていたか?
2.発作の原因は?
・一般的なアレルゲン「ハウスダスト、ダニ、イヌ、ネコ、花粉、煙、花火、強いにおいなど」と接触したか?
・運動したか?
3.発作の頻度や吸入薬使用頻度
・発作はいつから、どのくらい起こったか
・メプチンをどのくらい使用したか
・メプチンを使用して発作がどうなったか - アレルゲンになるものは?
- 喘息を発症させる要因は人によって様々です。一般的には、以下のものが考えられています。
・風邪- ・廃棄ガスや工場排煙などによる大気汚染
・食品や住宅建材などの化学物質
・ストレス
・ハウスダスト
・ペットの毛やフケ
・花粉
・たき火
・ダニ
・たばこ
・激しい運動
・天気や気圧の変化 など - どんなときに症状が出るの?
- 喘息は、一日のうちでも変動があることが特徴であり、夜間から朝にかけて起こりやすいです。また、次のような時に、喘息の症状が起こりやすい傾向があります。
①夜間、早朝
②風邪をひいたとき
③天気がよくないとき、台風など気圧に変化があるとき
④疲れているとき
⑤発作を引き起こす刺激に触れた時 - 喘息の治療はどんなことをするの?
- 喘息治療は、「症状が起こらないように毎日行う治療」と「症状や発作が起きた時に行う治療」の二つに分けられます。多くの方は基本治療として「ロイコトリエン拮抗薬」か「吸入ステロイド薬」を使用することとなるでしょう。
喘息は「毎日治療を続ける」ことが大切です。喘息症状がないときでも、気道の炎症は続いており、風邪やハウスダストなど炎症を引き起こす刺激が加わると、再び症状が現れてしまいます。そのため、喘息は、「症状がある時だけではなく、毎日治療する」ことが大切です。
また、アレルギー検査などを行い、喘息の原因となるアレルゲンを調べる必要もあります。アレルゲンは人それぞれ違うので、普段の生活の中で刺激になっていると思われるものを考えてみましょう。「猫を飼っている人の家に行くといつもくしゃみが出る」とか、「掃除をすると鼻水が出る」など、わずかな変化でも構いません。 - 当院の小児喘息の治療方針について
- 小児喘息のガイドラインにのっとって治療を行います。
小児喘息の始まり方として典型的なのが、「風邪の後に咳が治まらない」「風邪をひいたときにゼーゼーヒューヒューいう」です。5歳以下では、基本治療としてまずアレルギーの薬を飲み、コントロールできない場合に吸入ステロイド薬を加えることが多いです。
乳幼児の肺や気管支は成熟しておらず、ただの風邪でも、ゼーゼーが聞こえたり、咳がなかなか治まらないことがあります。そこで1回だけでは診断せず、3回目くらいのゼーゼーの時に喘息としての治療を開始することが多いです。ただ、RSウイルスやヒトメタニューモウイルスといったもともとゼーゼーの出やすいウイルスもありますし、ひどい咳が続く百日咳やマイコプラズマ感染症など、喘息と迷う場合も多いです。一方で、アレルギーの存在や、夜間や明け方の喘鳴が長期間続くなど、初回の受診時でも喘息と考えられる場合もあり、結局は病気の経過や、家族に喘息がいるかどうか、アレルギー検査、薬への反応性などを含めた、総合判断となります。 - 正しい吸入方法
- 作成中
- 喘息が悪化しないために
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- 吸入は毎日続けましょう
- 喘息治療では、吸入ステロイド薬などを毎日使用し、気道の炎症を常に抑えて、喘息発作を予防することはとても大切です。
- 自分のアレルゲンを知りましょう
- 自分がどんなときに発作が起きるか考えてみましょう。人によって、刺激物質となるアレルゲンはさまざまです。発作が起きた時の状況を思い出し、それらに合わせた対策を実践することが大切です。一般的にはハウスダスト、ダニ、イヌ・ネコの毛等が多いです。血液検査である程度調べられます。
- タバコはやめましょう
- タバコは喘息発作を誘発する刺激物質です。タバコを吸うのはやめましょう。また、受動喫煙も喘息発作の原因となります。家族に喫煙者がいる場合、禁煙していただくか、喫煙場所を分離してください。
- 花火、たき火の煙に注意
- 花火やたき火などの煙も喘息発作を引き起こす刺激物質です。花火やたき火は、少し離れた煙の来ない位置で見て楽しみましょう。
- ペットのフケや毛を避ける
- 人によって、アレルゲンになる物質は異なりますが、ペットの毛やフケは、多くの喘息患者さんのアレルゲンとなっています。それらがアレルゲンとなっている場合は、そのペットを手放すことが一番望ましいですが、それが難しい場合は、まず毛やフケを吸わないように、居住スペースを分けてみましょう。生活を工夫することで、これらのアレルゲンにさらされる機会を減らしてみましょう。
- 風邪をひかないように気を付ける
- 小児のぜん息の場合、風邪がきっかけで喘息を誘発するケースを多く見かけます。その多くがウイルス感染症です。風邪を完全に防ぐことは難しいですが、予防接種をする、マスクをする、しっかり睡眠をとり生活習慣を整える、などにより、可能な範囲で予防を心がけましょう。
- 部屋の家具を見直しましょう
- 部屋の布団やソファ、じゅうたんについている、ハウスダストやダニは喘息患者にとっては刺激物質です。部屋や布団の掃除をこまめにするよう心がけましょう。また、じゅうたんをなくしてフローリングにしたり、ソファを布製から革製に変えるなど、適切な対策をすることでダニ対策をすることもできます。